2026年1月にラスベガスで開催されたCES 2026では、マーケティング領域において「データ」と「Agentic AI(エージェント型AI)」が大きなテーマとして浮かび上がりました。ここでは、マーケティング視点で要点を整理します。
1. データは「新しい通貨」として再定義された
CES 2026では、「データが新しい通貨である」という表現が繰り返し語られました。
ここで強調されているのは、単なるデータ量ではなく「質の高いデータ」が企業の競争優位を決めるという点です。
- 広告費やメディア露出だけでは差別化しにくくなっている
- 「誰が」「なぜ」行動したのかが分かるデータを持つ企業ほど、AIを使って成果を出しやすい
- データは一度集めて終わりではなく、継続的に更新・活用していく「資産」として扱う必要がある
この流れは、CES 2026のレポート各種でも、マーケティングの中核テーマとして扱われています。
2. Agentic AIに必要なのは「動けるデータ」
画像スライドでも強調されていたのが、「Agentic AIに必要なのは動けるデータ」というメッセージです。
ここでいう「動けるデータ」とは、AIが自律的に意思決定・行動できるだけの情報を伴ったデータのことです。
- 悪い例:年齢・性別・PV数・フォロワー数など、眺めるだけの“静的”なデータ
- 良い例:
- なぜその商品を選んだのか
- どこで迷ったのか・不安だったのか
- 何が購入の決め手になったのか
- なぜカゴに入れたのに買わなかったのか
このような「理由」が紐づいたデータがあると、Agentic AIは以下のようなことが可能になります。
- ボトルネックとなっている顧客行動の段階を自動で特定
- 改善施策(クリエイティブ・オファー・導線など)の仮説を立案
- 施策の実行と検証(PDCA)を継続的に回す
つまり、Agentic AIの成果は「どれだけAIにとって動きやすいデータを渡せるか」で決まると言えます。
3. プライバシーを守ったアイデンティティ基盤が成果計測の鍵
もう一つの重要なポイントが、「プライバシーを守りながらアイデンティティ基盤を構築することが成果計測の鍵になる」という点です。
Cookie規制やトラッキング制限が進む中で、従来のように「とりあえず集めたデータ」を自由に使うことは難しくなっています。
その代わりに、以下のような方向性が明確になりつつあります。
- 本人の同意を前提とした、認証済みのシグナル(メールアドレス、会員IDなど)を軸にしたデータ設計
- クリーンルームや安全なデータ連携環境を通じた、広告配信と成果計測の統合
- 「誰にどの接点で何を見せた結果、どのような行動につながったか」を、プライバシーに配慮しながら一気通貫で追える仕組みづくり
CES 2026のマーケティング関連セッションや海外レポートでも、アイデンティティ基盤を前提とした「決定論的なオーディエンス理解」が今後のスタンダードになると強調されています。
4. 「人間の本質的な行動が分かる生データ」が最重要
スライドの最下部には、「人間の本質的な行動がよく分かる生のデータが大切です」というメッセージが掲げられていました。
これは、Agentic AIや精度の高いマーケティングを実現するうえで、最も重要な示唆です。
- 数値指標(PV、フォロワー、インプレッションなど)は“結果”であり“理由”ではない
- 顧客インタビュー、アンケート、チャット・問い合わせログ、店舗スタッフのメモなど、アナログに近いデータほど「本音」が含まれている
- とくに中小企業・ローカルビジネスは、顧客との距離が近い分、この「生データ」を大企業よりも集めやすい
動画では、「AIがどれだけ進化しても、“なぜ”の部分を現場が取りに行くことをやめた瞬間に、AIの価値も頭打ちになる」といった趣旨のコメントもありました。
AI時代だからこそ、人間の感情や行動の文脈を理解する努力が、最大の差別化要因になるという逆説的なメッセージです。
5. 日本企業・マーケターへの示唆
上記を踏まえ、CES 2026から得られる示唆を、日本のマーケター・事業者向けに整理すると次のようになります。
- 「とりあえずデータを貯める」から「AIが動きやすいデータを設計して集める」への発想転換
- PVやフォロワー数よりも、「なぜそういう行動をしたのか」を説明できるデータを優先的に集める
- 会員IDやログイン情報を起点にしたアイデンティティ基盤づくりを、早い段階で設計する
- プライバシー配慮と顧客体験向上を両立させる仕組み(同意取得、データ利用の透明化など)を整える
- 現場で得た“生の声”をそのまま捨てず、構造化してデータベース化し、Agentic AIのインプットとして活用する
参考・引用元
※上記は、CES 2026の現地レポートをもとに、マーケティング視点で再構成した要約です。
